ビリージョエルと聞くと有名な曲は何を思い浮かぶだろう・・・

「オネスティ」「ストレンジャー」「素顔のままで」など有名曲はいっぱいあるが、私見ではあるがこのアルバムの4.「ニューヨークの想い」が一番だ。
アルバムタイトルは邦題では「ニューヨーク物語」とあるが、原題は「Turnstiles」である。

Turnstileとは回転式の扉で、日本のいわゆる回転ドアではなく、回転式の金属パイプが3本位ついて回転しながら、人を通す改札のようなものを意味する。
日本ではディズニーランドの遊園地などの入り口がそれで、一人通る度に金属棒が回ってカウントされて入場できる。
最近では電車の改札はすべて自動改札になってしまっていたり、会社の入り口もピッとIDカードをかざすと自動に開く式だが、昔のニューヨークの地下鉄の改札口が、その時代の象徴とも言える。

1976年にリリースされるが、前作の「ストリートライフ・セレナーデ」で少しは認知度が出てきたビリージョエルが、活動の拠点をロサンゼルスから故郷のニューヨークに移ってレコーディングした4作目となる。
当時はあまり売れなかったが、次作の「ストレンジャー」、更にはその次の「ニューヨーク52番街」の大ヒットを生む事になる。
まさにこのアルバムがビリージョエルの最高傑作だと呼び声も高い。
ロスを離れる気持ちを歌った、1.「さよならハリウッド」、はたまた4.「ニューヨークの想い」は都会の寂しさを感じ、2.「夏、ハイランドフォールズにて」はビリーのピアノのイントロから、ニューヨーク郊外のハドソン川上流の避暑地で緑と水の気持ちよさが伝わって来る。
3.「踊りたい」の唯一レゲエ調の曲もアクセントになっている。
5.「ジェイムズ」、7.「楽しかった日々」は是非とも小さい子供に一緒になって練習すると、英語の練習になるような、気持ちの良いわかりやすい歌詞である。
6.「プレリュード/怒れる若者」はビリーのピアノプレイを楽しんで頂きたい。

しかしながら最後の8.「マイアミ2017」はビックリする。
1976年のビリーが多分、2017年の未来で孫に語っている。
2017年と言えば3年前だが、1976年からではずっと未来の事になる。
およそ40年後にニューヨークは「摩天楼は崩れ落ち、恐ろしい大火がニューヨークを襲う」と回想する。
多くのニューヨーカー達はマイアミに移り住み、ニューヨークの大破壊を憂う。
その様子を次の世代に説明する歌であるが、概ねその予想が現実になってしまっていることに驚愕してしまう。

2001年の9.11の世界同時多発テロやまさに今起こっている新型コロナウイルスの世界的感染拡大の問題など、後にビリージョエルも政治的なメッセージを歌に込めるようになっていくが、この頃から始まっていた・・・

我々は果たして2020年の40年後、2060年を予想出来るだろうか・・・